
僕は全然知らなかったんですけど、日本のインターネット上でナイキがメチャメチャ嫌われているそうで。なんでも、2020年に出した「人種差別をやめよう」的な広告が逆に日本人を差別してるというふうに受け取られて、さらにその頃進めたD2C(Direct to Consumer)戦略が思いっきりズッコケたことも重なって人気が急落。確かになー、久々にスポーツショップに行ったら商品棚に占めるナイキの割合が一昔前では考えられないくらい減っちゃってました。ひえー怖。
とはいえ「僕は」なんだかんだでナイキが好きなんで。これからもナイキのスニーカーを履き続けるつもりでいます。近年ハマってたオールバーズは素晴らしい履き心地の一方、耐久性がイマイチなのと前後バランスがフラットすぎて歩くスピードが出にくいのが難点。履き心地、耐久性、歩きやすさのバランスが一番僕に合っているのがナイキ。小学生からナイキを履いているのでもう足のカタチがナイキなんですよ。これはもうしょうがない(笑)
若い頃は、世間の評価に影響されて自分の中での評価が変わっちゃうことが多々ありました。「これいいな」と思っていたヒトやモノを現実世界やインターネット上で貶されると、そのことがアタマにこびりついて離れない。結果、自分の中でも「いいな」の気持ちが萎えてしまう。この現象は、美味しいモノを食べているときにそれを台無しにする映像を見せられたり言葉を掛けられたりすることと同じ、ということで、僕の中では「うんこカレーの法則」と呼んでいました。
今年のF1も、それです。
……前置きが長すぎました(笑)でもホントに不評なんですよねー今年のF1。電動の割合が増えたパワーユニットと、それに伴うクルマの動き、ドライバーに課される操作の制約といったことが軒並み大ブーイングの嵐で。前のF1記事で書いた通り「僕は」気に入っているんですけどね? なんかもう今年のF1が良いと言ってるの、世界中で僕1人だけなんじゃね? と思えるほどとにかく不評。あまりにも不評。果てしなく不評。
これじゃああまりにも「今年のF1ちゃん」が可哀想なので、「技術」「ドライバー」「時代」という3つのポイントに絞って反論しよう、という記事でございます。
- 技術
まずね、テクニカルレギュレーションが変わった初年度なわけですよ。今年は。初年度はこんなもんだってみんなわかってるハズなんですけどね…… 忘れたとは言わせません。
2014年、自然吸気のV8エンジンからV6ターボ+ハイブリッドに変わった年。メルセデスは別としてどのチームもそれなりに壊れてました。全開で走れない区間は、ヘタすりゃ今年より多かったくらいじゃないでしょうか? 衝撃でしたねF1でリフト&コースト(フルブレーキングする前にアクセルもブレーキも踏まず惰性で走る区間を持つこと)するなんて。でも、そのレギュでのクルマ作りが煮詰まった2021年はあの劇的な最終戦、フェルスタッペンの初戴冠でした。
2022年、グランドエフェクトカーを復活させた年。F1界で「ポーポシング」が流行語に。ハミルトンが背中を痛めてレース後、なかなかクルマから降りられなかったとかね? 今のアストンマーティン・ホンダなんて可愛いもんですよ。誰がどう見ても寿命を縮める。オンボード映像から伝わってくるドライバーの負担たるや凄まじいモノがありました。でも、そのレギュでのクルマ作りが煮詰まった2025年は予選で全車が1秒以内に入るという、F1の歴史上で類を見ない大接戦が繰り広げられる激熱シーズンになりました。
きっと、今年からのレギュも煮詰まっていけばスゴイことになります。だってこれはF1。世界一の技術力を競う「走る実験室」です。むしろ今、仕上がっていないこと自体、伸びしろにしか見えないんですけどね? 数年後の将来を見据えた想像でも楽しむ。それがF1ファンの嗜みです。
- ドライバー
一部の解説者などが言う、今年のクルマは「ドライバーの本能に任せて走れない(本能に任せて走ると遅い)」ということ。確かにそう。今年のクルマでラップタイムを良化させるにはドライバーが全開で行きたいところを敢えて抑えて、逆に、先を見据えてちょっと抑えて行きたいところでも敢えて全開にする、といった操作をする必要があります。それは一見すると、とても不自然です。
では今までのクルマは「ドライバーの本能に任せて走ると速い」モノだったのか? というと、そうではない、というのが僕の意見です。これは現実のレースでもゲームでも同じで、モータースポーツはいかに冷静に、瞬間瞬間で正しい操作ができるかが勝負の分かれ目。正しい操作をするためにはドライバーが持つ「感覚」というセンサーが必要で、そのセンサーの数が他人より多かったり精度が良かったりするのが良いドライバー。さらに、そのクルマに合わせた正しい操作をするには、理性で本能を抑えることが絶対に必要です。
1992年、圧倒的な速さでシーズンを席捲したウィリアムズの「FW14B」。当時最先端のアクティブサスペンションで完全武装されたあのクルマは、実はドライバーが限界まで攻めてはいけないクルマでした。なぜなら、ブレーキング時に限界を超えてタイヤをロックさせてしまうとアクティブサスの動作タイミングがズレるので、一度そのタイミングをリセットする必要があったから。まさに理性で使いこなす、常に99%で走ることを要求されるクルマ。当時のドライバー、ナイジェル・マンセルのイメージとは全く合いませんけど(笑)
今年も同じです。クルマを速く走らせるには本能と理性の調和が必要。今のところ、ちょーっとばかり理性の割合が多すぎるかな? くらいの、微々たる問題です。
- 時代
今年のF1sage(さげ)と一緒に、セナのオンボード映像がSNSでバズってました。1989年、鈴鹿を走るマクラーレン・ホンダ。確かにスゴイ。Hパターンのシフトで、ところどころで片手運転。2位のプロストに1.7秒差をつける圧倒的な速さ。コメントは「これぞモータースポーツ」といった絶賛で溢れてました。でも敢えて言いたい。
比べられないよ。
タイムは1分38秒。今年より約10秒遅い。鈴鹿で10秒差ってもうカテゴリー違いです。それくらい全く違うクルマなわけです。それを比べて「今よりスゴイ」って、ねぇ? 無理がある。F1マシンで片手運転、確かに人間業じゃないです。でも当時より今のドライバーの方が遥かに厳しいトレーニングを積んでいて、筋力もあります。ぶっちゃけ、練習すればフェルスタッペンでも同じように運転できると思います。セナと同じタイムで走れるかはわかりませんけど……
逆に、当時のセナが今のクルマに乗って即、チャンピオン争いできるかと言ったらそれもわからないわけで。結局、昔は昔、今は今。ドライバー達は、自分達が持つクルマに合わせて最適化した運転をするしかない。道具から最大限を引き出す。それこそが「モータースポーツ」です。
いやー僕もセナ大好きだったんでね。こんなこと言いたくないんですけどねホントは。でも世の中があまりにも、あまりにもセナセナセナ、マクホンマクホンマクホンばっかりで今のドライバー、クルマが軽んじられているように思えたんで。まぁ フェルスタッペンはじめそのドライバー自身が今年のクルマをボロクソに言ってるので、より世の中的に「今年はダメ」の方に向かっちゃってることは事実としてありますけどね? タッペンの一連の発言は、長い目で見ると自分達F1ドライバーの存在価値を下げることに繋がると思うのですが…… 残念としか言いようがありません。
以上、「技術」「ドライバー」「時代」という3つのポイントで今年のF1も悪くないよ、フツーに面白いよ、と言いたい記事でした。その中でも特に「技術」のところで述べた「数年後の将来を見据えた想像でも楽しむ」という視点。これはF1ファンとしては絶対に持っているべきで、これがあるのとないのとではF1の面白さが全然違ってきます。Netflix経由でF1にキョウミを持った新規ファンのみなさんはもちろん、懐古主義の古参ファンのみなさんにこそ思い出していただきたい。
今は今、未来は未来。F1は続いていくわけです。
