誰だよ山王戦じゃなくてガッカリとか言ってたヤツ!!
というわけで公開前に超ド級のフェイクニュースが流れるという、情報過多社会たる現代の闇が満ちに満ち切っていた映画版スラムダンク「THE FIRST SLAM DUNK」を観てきました。ちなみに謎の流れでお店のヒト&常連さんと一緒に行ったわけですが、まぁ これに関しては本当に理由なんて説明できません。ただなんとなくそうなった。飲んでるときのイキオイって怖いですね!
さて、この映画の内容を語る前に、昔放送されていたテレビアニメ版スラムダンクについて語らなければいけません。
僕はあれが大嫌いでした。
最近の当ブログのアクセス数を考えたらほぼ心配ないとは思いますが、あのアニメを好きだったヒトが万が一、何かの偶然でコレを読んでしまった場合は申し訳ない! でも僕にはあまりにも無理でした。どこからどう見てもバスケをやったことがない、見たことすらないヒトたちが作ったとしか考えられない不自然極まりない動き。物理法則に逆らっているかのようなボールの軌道。全体的に雑すぎる作画。あんなの完全に原作(ピー)です。
漫画を読むときって普通、絵と台詞を映像と音声に脳内変換しますよね? あのアニメは、僕の脳内で再生された映像とあまりにも、あまりにも、あまりにもかけ離れていました。あんなのスラムダンクじゃない。オレのスラムダンクを返してくれ。ストーリーがどうの演出がどうのという以前。観るに値しないゴミというのが僕の感想でした。
あれから30年近くの月日が経ち…
ようやく、時代が追い付きました。
そりゃまぁ 完全なんてない。終わりなんてない。でも確実に、かなり、メチャクチャ良い。フルCGの滑らかな動きはもちろん、シュートフォームひとつとってもいわゆる「バスケの動き」ができていました。技術だけじゃなく作り手のヒトたちがちゃんと分かってる。それが伝わる。僕の中でのスラムダンク初映像作品はコレです。ありがとう。作ってくれてありがとう。
と、ここまででほとんど言いたいことは言えた感がありますが、次にストーリーに関して。
主人公、宮城リョータ。
…という衝撃。確かに、主要キャラの中で最も「掘り下げられてない」のは間違いない。だからオリジナルストーリーを作りやすい。間違いなくそれはある。ただそれと同じくらい大きかったと思われるのが山王戦の大活躍。あの試合、湘北のメンバーは誰ひとり欠けても山王に勝てる見込みはなかった。それは言うまでもないことですが、それでも敢えてMVPを挙げるとすればリョータ。リョータがいなければ、湘北はフロントコートにボールを運ぶことさえできなかったんですから。
やっぱね? バスケはポイントガードなんですよ。しかも2年生ですからね。神奈川県大会では牧、藤真。インターハイでは深津という3年生の超高校級プレイヤー達を相手に10センチ以上のミスマッチを背負って戦い続けるってどんだけ凄いんだよと。リョータは凄い。実はモノ凄い。
まぁ だからこれは衝撃であり、納得です。リョータには、主人公になる権利が十分あった。
なおラストのアメリカに留学して沢北と試合をするシーンはちょっと蛇足だったかな? と思わなくもないですが… それ以外はもう、はい。まさかあんな複雑な… というか不幸な家庭環境だったなんてという感じはもちろんありますけども。
次に演出面ですが、僕的に凄く気に入っているのが「試合のリアルタイム感」です。
スポーツ系に限らずアニメって時間軸がバグってることがあるじゃないですか? っていうかむしろそれが普通だったりするじゃないですか? サッカーアニメで、フィールドの長さが1キロ以上あるんかいってくらい延々とドリブルしていたり。「みどりのマキバオー」で中山競馬場の坂がまるで登山のようになっていて、最後の直線だけで10分以上走っていたり。旧スラムダンクもそんな感じで30秒オーバータイムをガン無視した超長時間の攻撃なんてのがあったと記憶しています。
その点、今作では(少なくとも初見で見た感覚では)かなりリアルタイムに感じられるスピードで試合シーンが展開していました。特に、漫画だと1コマを使ってドーンと出るガッツポーズなどが敢えて引きの構図で描かれていたのが素晴らしかった。あれによって試合の流れが途切れず、しかも自分があの会場の中で試合を観ているかのような没入感を得られる… 一方で、引きであってもワカルヒトが観ればワカル「ああ! アレだ!!」感。一粒で二度三度美味しい!
あそこまでできるなら、リョータの回想シーンすらなくして純粋に山王戦だけを観たくなっちゃうくらいですが… それを言っちゃあお終いよ、ということで……
原作だと数年間続いた山王戦を約2時間という枠の中で描き切る時間的都合、そして主人公リョータを際立させるための都合上、どうしてもカットされたシーンはあります。魚住も海南の選手も出てきません。丸男も何の説明もなくイキナリ出てきますし、沢北の背景も描かれません。なのでどうしても、この映画を楽しむには事前に漫画を読んでいることが必須となります。でもそこはそもそも「今さら」の映画化ですから。そもそも原作ファンしか観ねえよと。
この映画は僕らのため。僕らファンのモノですから。
……はい。長々と語ってきましたが、とにかく良い映画でした。最初に言ったように個人的にテレビアニメ版の悲劇がある分、期待値が低かったのが逆に良かったのかもしれませんが… 予告編はもちろん、ネット記事やSNSの感想など全ての情報をシャットアウトしていた甲斐がありました。最高でした。リョータ主人公… リョータが… いやホント素晴らしい。ありがとう。
なお作中で「リョーちゃん」と呼ばれるたび、イチイチ気になってしまったワタクシ。こればっかりは仕方ないです(笑)